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さて、遊女の格と見世の格が理解できたら、いよいよ遊郭での遊びを。
まず茶屋を通して、遊女を選びます。吉原細見などの、吉原のガイドブックには花魁の浮世絵やどの見世にはどの様な遊女がいるか書き記してあります。

まず、高い位の遊女は、一回目から客と寝たりはしません。客を断る事も出来たのです。
その遊び方とは・・・

 

初会

初めての客を初会の客といいます。
この初会には簡単な見立ての作法があり、これを引付の式といいます。
これを行う座敷を引付部屋とか引付座敷といい、大体表二階にありました。

十返舎一九(じゅっぺんしゃいっく)の『青楼年中行事』には、

「若者客をひいて座敷に請じ、盃を出し硯ぶたを運ぶうち、火鉢の火は漸くに起かゝり、燭台の蝋燭いまだ暗うして四隅に足らず。床の間の前に煙草盆堆(うずたか)くならべし中に、梨子地(なしじ)に 真鍮のかなもの光り、火入の透明までぎらぎらしきは全盛おしよくの調度にて、まだ見ぬさきにおのづから、其主を現はしたり。……やがて相方打連れて席上に すはると、若者盃を進むるに、取上げて見ぬようで見るあり。笑ふやうでわらはぬあり。唯何の気なしに受けるあり、横にすはりて客に向はず、相節の流し目に 其余情をおもわせ、傍輩(ほうばい)同士のはなしなどすると、高祥にして淫声清く、袖にて笑ひを覆ふなどは云々。」

これで見ると、花魁との対座は、引付部屋ではなく、引付が終わったあと、花魁の部屋へ案内されてからと思われます。遊女屋の格により、また遊女の等級によっても、その状況は異なっていたようであります。

以上は、だいたい高級な遊客の場合であり、一般には茶屋が案内して遊女屋に至り、張見世の遊女を自ら見立てて、茶屋者にその女を指示します。それから遣手(やりて)(遊女屋で諸事の取り持ち、また、遊女の監督や指導などをする女性)なり、遊女屋で働く若い者、また禿(かむろ)なりに案内されて、その遊女の部屋か、または名代部屋(廻し部屋)へと案内されます。茶屋の内儀などはこれに同席して、客と遊女の間を取り持ち、明朝の迎えの時間などを約束してから帰りました。これも茶屋の勤めの一つであったのです。

ずつと上がると明部屋へ先づ入れる
先づ最初煙草盆から天上し【階下の張見世部屋から二階へ運ぶ】
最初まづ御覧に入れる煙草盆

ここで一服つけながら、遊女のご出座を待つのであるが
昼三(ちゅうさん)などの上妓(高級遊女)ほど客を長く待たせるのが一つの見識とされたようであります。

客人は乙の座へつく面白さ【甲の座、つまり床柱を背にした上座には花魁が座る】

では、客はどのあたりに座るのがよいか、洒落本『傾城買指南所(けいせいかいしなんじょ)』には、

「居所も上らぬやうに、下らぬやうに、すわり給へ。それを茶屋船宿のいる所に、居りなどして、そこにお居でなさる所じやござりませぬなどゝエラいわるるものだ。さてけいせひ出来り、床柱によりかゝる。是からまづ盞(さかずき)事だ。」とあります。

初会には壁へすいつく程すわり
まじいりまじいりといまいましい初会【客の人品骨柄をとくとごらんじる】
初会の盃抹香ひねった手【遊女の気取った手つき、焼香でもするように見える】
頂いて飲むと女郎は脇へ向き
毒断のやうに初会は喰はぬなり
【毒断とは、病気の時など身体に障りとなる飲食物を避けることをいう】
十人が十人初会たべんせん【酒を飲むことを「たべる」という】

これらはいずれも昼三などの上妓の初会で、当夜は肌を許さなかったといわれる。

男女席を同ふせざるは初会【「男女七歳にして席を同じうせず」の文句を援用】

しかし、中以下の遊女なら、

初会の夜まず商売と年をあて
初会から馬鹿らしいねとちく生め【「馬鹿らしいね」は遊女の通言】

といったなれなれしいのもいた。もっとも、初会の客に対しても「床をつける」のは遊女の義務で、

初会には器を借すとおもふ也
始終来もしようか位いで初会させ〔これからもしょっちゅう来てくれるだろうと推量してのサービス〕

翠帳紅閨(すいちょうこうけい)にけろりと初会の夜
初会には道草を喰ふ上草履〔上草履(うわぞうり)は遊女の隠喩〕

草も木も寝るにまだ来ぬ初会の夜
待たせるだけ待たせておいて、とことんふられたのでは吉原へ来た甲斐(かい)もないと、
投げられもしようかと初会片苦労〔投げられるは、ふられると同義〕

 

二会(回)目は廓内用語で「裏」という。二会目に登楼することを「裏をかえす」という。
遊女から見ると、この二会目の客は「裏の客」。

二会目はほれそふにしてよしにする
裏の夜は四五寸近く来て座はり
枇杷(びわ)一つ喰たが裏のしるし也
もう裏は西瓜(すいか)くらいをちつと喰ひ

というわけで、初会からみれば、だいぶくつろいだ感じであるが
遊女が身も心も許すというところまではまだいかぬようであります。

 

三会目

三会目の登楼は、はじめて馴染(なじ)みになる機会であるから、相方に気に入られるために、諸事気を配らねばならぬことが多い。特に廓内の特殊な慣習、つまり「廓の諸訳(しょわけ)」を知っておかなければならない。まず、花魁に床花(とこばな)というのを付けなければならない。

三会目には遣手にも祝儀を出す。そしてこの三会目に、はじめて箸紙(はしがみ)というのができるのです。
これは馴染みとなった客専用のもので、客の紋なり、表徳(ひょうとく)(表徳号のこと。雅号・別名・あだ名をいう)なり、本名なりを記して、遊女の部屋の茶箪笥(ちゃだんす)に大切に保管されま

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